NOVEL

世の中に絶望し、屋上から身を投げた少女は突如黒い霧に覆われ姿を消す。
全ての記憶を無くして辿りついた先で彼女が出会ったのは？

さようなら世界。私はもう終わりにする。
自分の存在価値や生きる意味を見失い、マンションの屋上から飛び降りた少女。
その体を突如黒い霧が覆い、自分の名前も何もかも忘れた状態で気が付く。
途方に暮れた少女は、ディーと名乗る紳士風の男に声をかけられる。
連れの「アイ」と呼ばれる黒髪の少女には自分の事がなぜか見えていない様だ。
ディーに促され、名前を思い出そうとすると、強烈に浮かぶアルファベットの「A」。
ところがディーがアイを呼ぶ度に感じていた痛みが、そのAという文字と重なり気付く。
「わたしの名前は、あい。」
その瞬間、またもや黒い霧が現れ・・・。

私の名前は多分アイ。多分高校生。
姿を消したユウを探そうとした時、目を疑う様な天変地異が起こり・・・。

ナルは、年を取らず、死なない。それぞれの意識で認識されたりされなかったりする。一人一人目の色が違い、身体のどこかに∞に似た痣がある。そして以前の記憶がない。
ナルの世界に来てしばらくたった頃、アイは同じ家に住むディーと出かけた街でユウという少女に出逢う。ところが、空に現れた巨大なクジラに目を奪われているうちに彼女は姿を消してしまう。
追いかけようとしたその時、天変地異が起きる。
有り得ない天空の様子、目まぐるしく変わる季節。今までアイには見えなかった、交差点を行き交うたくさんの人、空から舞い降りては黒い霧に包まれて消えていく人々を見たことで、アイは初めて自分の強い意志を示す。

ユウを探して街を走り回るアイが偶然出逢ったチアキ。
普通のナルとは少し違うこの少年は何者なのか？

ディーと別行動でユウを探すことになったアイは、人の群れの中にぽつんと佇む少年を見つける。
彼に記憶はないもののチアキと名乗り、腹部にある∞のような痣にも見覚えがあるという。なぜ他のナルと違い、自分の名前や痣の事を知っているのか訝るアイ。
ディーはチアキを見て驚き、ユウ探しを中断して連れて帰る。
白い家の住人が皆、彼の事を知っていることに戸惑うアイだが、チアキは以前拡散したことがあると言う。